F.リスト:ラ・カンパネラ(パガニーニ大練習曲集より 第3番 S.140)
Date: 2023-03-09
栄えあるピアノ演奏動画第一弾として、まずは有名かつ難曲として知られるリストのカンパネラから参りましょう。
ラ・カンパネラを含むこの練習曲集は、1831年に伝説的なヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニのヴァイオリンの演奏を聴き大きな衝撃を受けたリストが「僕はピアノのパガニーニになる!」と決意し、自らの技術を磨き上げるために作り上げたと伝えられている。リストはのちにこの曲集を何度も書きなおし、そのため現在いくつかの版が残されている。特に1838年版のそれは演奏が極度に困難で、録音を行っているピアニストの数は現在においても僅か6名のみという鬼畜ぶりである。
この曲集の3曲目であるカンパネラについて、今日演奏されているのはもっぱら1851年版で、1838年版のに比べてだいぶ易しくなった代わりに曲全体の構成はかなり洗練され、ピアノの高音による鐘の音色を全面に押し出した仕上がりとなっており、器用さ、大きい跳躍における正確さ、弱い指の機敏さを鍛える練習曲となっている。曲中においては最大で15度の跳躍があり、この跳躍を16分音符で演奏した後に演奏者に手を移動する時間を与えぬまま2オクターブ上で同じ音符を演奏させる。ほかにも薬指と小指のトリルなどの難しい技巧を含む難曲である(繰り返しますが「だいぶ易しく」はなってるんですよこれでも)。
この曲は自分にとってずっと「壁」であり続けている。特に同音連打、オクターブ連打がどうにも苦手で、中学2、3年ぐらいの時から練習を重ねてきたもののどうにも満足いく演奏ができないでいる。別にこの曲にこだわる必要はないとは頭ではわかっているし、実際何年もこの曲から目を背けてきたわけだが、ピアニストとしての意地というか、かの藤原義江が言うところの「テノール歌手なら常にハイCをポケットに忍ばせておかなければ」という考えがときおり頭をもたげ、何度も何度もこの曲に戻ってしまうのである。
幸い整体に通い筋トレなどのやり方を教わるようになってから、今まで何度練習しても空振りに終わっていたパッセージが少しずつ弾けるようになってきた。特に両小指に力が入るようになったのが最大の進展で、これからまだまだ上達するんではないかという希望が持てるようになったことが大きな収穫である。そして今回、まだまだ発展途上ではあるけれども、これまでのリハビリ(というのかどうかは微妙だが)の成果を残すためにここに演奏動画を掲載することとした。なおこの曲については、これからのリハビリの成果の定点観測という意味も込めて今後も何回か動画を収録しこのページに逐一掲載していく予定である。
(Recorded: 31.Jan.2023, B studio, C.Bechstein Centrum Tokyo)