土合駅の思い出 その①
Date: 2022-04-24
栄えある「旅行記第1弾」として、まず手始めに「日本一のモグラ駅」土合駅から行きませう。
自分が土合(どあい)駅に初めて行ったのは確か5、6年前の冬だったかと思う。その日朝早くから気合を入れて、寒い寒い真冬のみなかみに日帰り温泉旅行に出かけ、温泉は結構楽しんだ記憶がある。温泉に食事と、自分のやりたかったことを一通り終えて時計を見るとまだ昼の1時とかで、さすがにこのまま帰るのもなぁーんかなぁーっという思いに駆られた。なんかいいとこないかなーと水上駅にあった周辺地図をぼーっと眺めていると「土合駅」の名前が目に入り、ふと、そーいえば土合駅ってなんかすんごい秘境駅だったんだっけかと思い出した(このころは自分の鉄道熱はそこまで強くなかった)。さらにちょうどよく上越線下り電車の発車時間がせまっていたことも重なり、これは何かの縁だと思い、発車1分前の電車にぎりぎり潜りこんだ。
雪が深々と降り積もる冬の水上にぽつんと立つ秘境土合駅・・・想像するだけでそわそわするシチュエーションではないか。さて駅を出るとすぐ電車は大きく右にカーブした。今回の日帰り旅行の「延長戦」の開始を告げるかのような急カーブであった。文字通り雪をかき分けながら利根川沿いに北に進み、水上駅を出て3~4分ほどで電車は、10数キロに及ぶトンネルのまさにちょうど入り口のところにある「湯檜曽駅」に停車した。ここもなかなか不思議な雰囲気をまとった駅で、いつかここにも行くぞっと心に誓いつつ湯檜曽駅を見送り、電車は更にトンネルを深く深く突き進んだ。トンネルの中をジョイント音を大きく轟かせながら進むこと3~4分、電車は速度を緩めはじめ、やがて薄暗いがその割にはやけに堂々としたホームらしきものが目に入ってきた。土合駅である。
ドアが開いた瞬間に感じた、むわっとした生温さとコンクリート建造物特有のにおいに興奮した。それを味わうためだけに(!?)その後現在に至るまで何度か訪れている。この生温さは土合駅(下りホーム)がいかに地中深いところにあるかを如実に物語っている(注1)。ホームのところ以外はただただ吸い込まれるような闇が広がっていた。青色に光る列車用の信号が闇の始まりを告げるかのようにぽつんと光っていた。電車が去った後のホームは静寂そのもの。湿気によるもやがホーム全体に広がり、秘境感をより一層醸し出していた。
ホーム上土樽寄りのところにはどこにでもありそうなプレハブ作りの待合所や倉庫、簡易トイレが設置されているが、これらがここが「駅のホーム」であることを静かに主張していた。待合所入り口すぐのところにテーブルがあり、ノートや筆記用具が置かれていた。壁には多くの寄せ書きがあった。自分は結局何も書かなかったが。隣の倉庫は全くのカラであった。トイレで用を足し、ホーム全体を今一度見渡し、大きく深呼吸をして、いよいよ難事業に着手した。(その②に続く)
(※追記 文章を一部修正しました。2022/04/26)
(※追記 文章を加筆修正しました。2022/04/29)