2022年度 埼玉名人戦を振り返る(二日目)
Date: 2023-03-30
※この記事をより一層楽しめる(?)ように、まずはこちら→(リンク)で予習をどうぞ。
去年12月4日(日)と11日(日)に行われた、埼玉名人戦をざっくり振り返ってみました。
二日目
前の週の埼玉名人戦一日目では(その様子はこちら→リンクからどうぞ)シード権者に与えられた特権を最大限に活用して何とか二日目進出&来期シード権獲得を果たしましたが、それからというものの野狐囲碁では相変わらず7段戦で連勝連敗を繰り返すなど、囲碁に関してはいまいち振るわない日々を過ごしました。しかし無情にも大会二日目はそんな自分のことなど一切待ってはくれません。冬の始まりを感じつつあった12月11日、ヘナヘナの気力をなんとか振り絞り、二日目の会場であるさいたま新都心の碁会所に突撃しました。
埼玉囲碁界のメッカの一つともなっているさいたま新都心の碁会所ですが、しかしここは自分にとっては相性が非常によろしくない場所でして(笑)、これまで埼玉名人戦で3回お世話になってるんですがまだ一回もここで勝ったことがありません。3年前の「悲劇」→(リンク)もここで起きました。そういうわけでベスト4云々というよりも、とにかくいい加減「新都心で初日を出したい」という思いを持って組み合わせ再抽選のくじを強く引きました。
準々決勝の相手は若手のH・Kさんでした。H・Kさんは埼玉県内の大会でも上位入賞を果たしたこともある若手強豪の一人でで、私はこの方には3年前に互先でこっぴどく負かされた強烈な記憶があります(もっとも3年前は自分の棋力が今ほどではなかったわけですが)。ベスト4に進めるかどうかの試金石としてはまさに申し分ない相手ではありませんか。気合を込めて白石をたくさん握りました。ただこの日はひとつ懸念材料を抱えておりました。それは・・・
黒が自分。このころの自分は並び小目から大ケイマシマリにハマっていまして、この構えを大一番でも採用してみました。上の図まで、AI評価値は黒のほうがあまりよろしくないようですが人間の感覚ではこれで一局でしょう。上図白のコスミツケはなかなか厳しい一手で、
まあ形的にはこれしかないでしょうと黒1と抑えたのが苦難の道の始まりでした。白2から4のカケツギを見てギャアとなってしまいました。仕方なく黒5から7と様子見するも(黒7は白4右オサエと右側シチョウで抱えられてる黒石のシチョウアタリを兼ねている)、平然と白8,10と左側を制され一気に仕上がってしまいました。黒9,11と右側を取ったけど、スタートの段階で右下の黒一団はガッチガチに強い石であり、そこからせいぜい12目ほど増やしたにすぎず、その対価として左側を差し出したのでは全然取引になってませんね。実は前日の夜、変な時間に目覚めその後まったく寝れずに当日を迎えかなり眠気を感じながらの会場入りとなったことが懸念材料でした。しかし盤面のこの惨状は目覚め薬としては強烈すぎましたね(汗)。黒1では、
こんなもんでしたね。これでまだまだこれからの碁でしょう。
練習碁なら投了してもう一丁!な状況ですが、初のベスト4&新都心での初勝利がかかっていることもあってとてもじゃないけど投げる気にならず、しばらく相手の方に自分の見苦しい悪あがきのお付き合いをしてもらうことにしました(殴)。大差がついていても投げずにのらりくらりと打ち進めていると優勢になった相手の方に「安全第一」な手が目立つようになり、それですこしずつ差が詰まってくるものなんですね。白12は根拠確保という意味で小さくはないけど明らかに後手で(仮に白12を別の場所に打ったとして、黒が右側の白一団を取るのはまず無理だし、攻めて利益を上げる手段もパッとは思いつかない)、手番を得た黒は前図で死んだふり状態で放置した左隅の黒を復活させ、まだまだ好転まではいかないにしてもここで少しやる気が戻ってきました。一度負けを覚悟したあと怖いものなしになった黒は勢い23と上辺に打ち込みました。
ここ最近の自分の棋風はどちらかといえば実利重視、取るものを先に取っちゃう!という感じなんですが、本局はとりわけがつがつと稼ぎまくりました。がつがつしすぎ・・・(笑)。黒の実利はまあまあだけどおかげで中央の白模様はすっかり分厚くなってしまいました。ただ上辺打ち込んだ時点でここまでの進行はある程度予想(覚悟)してましたからこれはしょうがないですね。黒16と一段落したところで相手は次の一手のためにおそらく本局で一番長考していたように思います。そうして放たれた一手が・・・
白1。これにはびっくりしました。「勝てば勝着負ければ敗着」みたいな手は小心者の自分にはとても打てません。白1では、
上図白1と、右下黒に働きかけつつ白模様を広げる手を予想していました。ただ黒2と踏み込まれるとなかなかこの黒を取るのは難しそうですね。また仮に踏み込んだ黒石の外側に白石が来たとしても右下の白6子の逃げ出しはなかなか成立しないですね(逃げ出しに黒はケイマであおる手がある)。確かに前図白1が最善の一手かもしれません。さらにびっくりしたのはAIも前図白1を青丸表示(第一候補の手)していたことで、相手の冷静さには参りました。ただAIによるとこの地点で評価値がほぼほぼ50:50の形勢になっているとのことでした。自分のここまでのくそねばりも同様にほめてやらねばいけません(殴)。
相手が囲いに行ったのだからと黒も3~13と、このラインで黒地を囲いに行きましたが、AIによるとどうもこの方針が敗因だったようで、
黒1と、中央上部の白地を消しに行く一手だったようです。図は一例ですが黒が取られることはなく、実戦より黒地は少し減るけどそれ以上に白地も減るし、白6子は以前逃げ出しが望めないのであれば、これで少し黒が良かったかもしれません。実戦は少しばかりの黒地を稼ぐ代わりに白地も立派に育ってしまって、ここで勝負がついてしまいました。がつがつはいけませんね。
最後まで打って白4目半勝ちとなり、自分の2022年シーズンはあえなく終わったというわけです。いつになったらベスト8の壁を超えることができるのか、いつになったら新都心で初勝利を挙げることができるのか、悩みは深くなるばかりです。
なお、本局の相手H・Kさんはこの勝ちで勢いがついたのか、準決勝、決勝と立て続けに名局を打って一気に優勝まで突っ走りました。おめでとうございます。(了)